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ウクライナ情勢緊迫化でも、Fedはテーパリング継続へ

by • March 3, 2014 • Latest NewsComments (0)1448

Taper Is Likely To Go On During The Ukraine Crisis.

米政府は、ウクライナのクリミア半島を実効支配下に置いたロシアに対し行動に出ましたね。米通商代表部(USTR)は3日夜にロシア政府との通商・貿易の停止を、国防省もロシアとのあらゆる軍事関係を停止すると発表しました。ウクライナに軍事介入するロシアに武力で対抗せず、交渉のテーブルへ引きずり出そうとする作戦です。

ロシアといえば、3日の株式指数MSCEXは10.79%と暴落。

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2008年以来の急落を迎え、584億ドルが吹き飛んでしまいました。個別ではガスプロムが13.9%安、スベルバンクは15%安と大打撃を受けています。ルーブルも対ドルで約2%下落し、一時1ドル=36.9029ルーブルに到達。ロシア中央銀行(CBR)が緊急会合を開き、ロシア危機が発生した1998年以来で最大となる150bpの利上げを実施したにも関わらず、焼け石に水でした。

CBRは14日予定の通常の金融政策決定会合も行う予定ですが、追加利上げに踏み切るのでしょうか?7−9月期GDPは1.2%増と市場予想の1.4%増だったほか、国際通貨基金(IMF)が1月に公表した世界経済見通しでも2014年成長見通しは3.0%から2.0%へ下方修正されたように、鈍化過程にあります。いくら利上げがCBRのいうように「金融市場の安定のため」とはいえ、引き上げ過ぎたところでいつ落ち着きを取り戻すか不透明な情勢では利下げに転じる時期のメドも立ちません。

まさにロシアは今、外交・政治的ではなく資本市場に罰せられている状態といえます。

米株相場も煽りを受け3日、ダウ平均は約1ヵ月ぶりの下げ幅となりました。反対にウクライナ情勢緊迫化を受け金相場は反対に1350.3ドル(28.7ドル高、 2.1%高)、原油相場は104.92ドル(2.33ドル高、2.27%高)と大幅高で引け。米債にも資金が流入しを、米10年債利回りは約1ヵ月ぶり低水準となる2.6%付近で取引を終えています。

3日の相場だけでここまでリスク選好度が低下すれば、18—19日開催の米連邦公開市場委員界(FOMC)で100億ドルの減額を追加決定するのか、気になりますよね。

お馴染みウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のジョン・ヒルゼンラス記者は、6つの観点から紐解きます。

1)エネルギー
欧州のロシアに対するエネルギー依存度は25%。2009年にロシア—ウクライナ間で発生したガス価格交渉決裂当時は欧州に供給ショックがもたらされており、米国の輸出企業に打撃を与える可能性あり。
2)貿易
2013年時点で米国の対ロシア輸出額は110億ドルと、ベルギー向けの3分の1に過ぎない。反対に欧州は1000億ユーロ以上とかなりの規模に上る。
3)銀行
国際決済銀行(BIS)によると、欧州中央銀行(ECB)はロシア向け債権を1840億ドル、ウクライナ向け債権を230億ドル保有する。最も債権を保有するユーロ圏の国はフランス。一方で米国の銀行はロシア向け債権を370億ドル、ウクライナ債権を10億ドル保有しており、ブラジル、インド、中国など他BRICs諸国以下にとどまる。
4)通貨
ドルは対ルーブルで年初来から10%上昇。リスク選好度の低下に伴うドル高は資本力を強める半面、輸出企業には打撃。なにより、ロシアとウクライナの銀行システムに緊張を与える。
5)株式相場
企業幹部のセンチメントを冷やし設備投資および雇用の停滞を招き、間接的に経済押し下げ圧力につながる可能性。
6)米国債
地政学的リスクに備え、投資家は安全資産である米国債買いを加速へ。米国の銀行システムに走る緊張を緩和する期待あり。

結論を言うと、「ウクライナ発の脅威はFedの政策を変更するにあたって十分ではない」。テーパリングは継続する見通しです。

ウォーレン・バフェット氏も3日朝、CNBCに出演し「戦争が開始すれば通貨は下がる・・しかし現金を保有していてはダメだ。第2次世界大戦中に株価は上昇した」と発言。ウクライナ情勢緊迫化で3日のロンドン株式相場が下落したことについても、「気分が良かった」と言い放ちます。その上でどの英国株銘柄か指定しなかったものの、「今後も買い進めていく」と豪語していました。全く情勢を不安視していないんです。

本日のダウ平均は、75日移動平均線および一目均衡表の雲の下限で下落を止まりました。少なくとも、アメリカの投資家は冷静な目で進展を見つめているようです。

(カバー写真 :Reuters )

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