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2014年、モルガン・スタンレーが予想するサプライズは?

by • December 29, 2013 • Latest NewsComments (0)2836

2014 Macro Surprises According To Morgan Stanley.

2013年も、あと数日で終わりを告げます。

今年も当ブログにお越し頂き、皆さまには大変お世話になりました。2012年6月に現在の状態で開始したMy Big Apple、2014年もパワーアップしてマーケット情報からNYネタまで幅広くお届けさせて頂きます。ふつつか者ですが、何卒宜しくお願い申し上げます。

さて2013年最後の投稿は、2014年見通しでございます。

ブラックストーンのバイローン・ウィーン副会長の古巣、モルガン・スタンレー(MS)が「マクロ・サプライズ」を予想しています。気になる内容はといいますと・・。

1. フォワード・ガイダンスの失敗
主要国は円滑な政策正常化を目指し、足並みをそろえながらフォワード・ガイダンス時代に足を踏み入れた。逆に言えばひとつの中央銀行が失敗すれば、連鎖的に各中銀の信用が失墜しかねない。

2. シェールガス改革、世界へ波及
米国やカナダがシェールガス採掘の成功でエネルギー依存脱却ともに製造業ルネッサンスを甘受する様子をみて、各国も政治的、地理的、環境的な問題を乗り越えメキシコ、ウクライナ、ポーランド、英国、果てには中国も改革に乗り出す。一方、原油価格は供給過剰で足元のレンジ下限をブレークへ。

3. FOMC内でフォワード・ガイダンスに分裂
イスラエル中央銀行の前総裁フィッシャー氏の米連邦準備制度理事会(FRB)副議長就任は、フォワード・ガイダンス分裂への序章。同氏の厳粛たる姿勢と溢れ出る知識の泉に他メンバーも支持派に回り、FOMCは数値目標を撤回し、「労働市場が物価安定に沿って大いに改善するまで低金利を維持する」といった文言へ変更する。

4. スペインでデフレ、イタリアは日本化、ドイツはインフレ、
スペインとイタリアは景気鈍化が進む。特にイタリアでは構造的な低成長とデフレにより、国債利回りが急低下し日本化が加速する。スペインでは労働市場改革により労働生産性の上昇とともに賃金が下落する半面、GDPを押し上げ競争性の回復につながり債務も改善する。ドイツでは住宅価格と賃金の上昇で購買力が強まり、支出が加速する見通し。

5. アジア成長神話崩壊、中国にハードランディング危機、北朝鮮は現体制が崩壊へ
中国の成長は信用を軸とした投資に依存する半面、労働生産性の活性化に乏しく金融安定のリスクをもたらす。改革の遅れは景気循環に相反する政策調整の機会を失わせ、国内需要は上半期に急低下。金融市場のひっ迫もあり、製造業の設備投資にとって重しとなる。併せて、債務返済による成長下押しリスクが現れうる。

一方で、中国が改革を加速させれば上半期に効果を確認する可能性も。サービスセクターの規制緩和により民間投資が拡大し、サービスセクターの支出は活発化へ。世界景気の改善と国内消費の増加が地方政府にも恩恵をもたらし過剰な生産稼働力を吸収、地方政府の債務再編につながる。

他のアジア諸国ではインドとインドネシアの総選挙が弱い政府をもたらし、米ドル高と米実質金利の上昇により労働生産性引き上げに困難をきたし、GDPは下方リスクに直面する。

北朝鮮の金正恩政権が叔父で実質ナンバー2だった張成沢を粛正、同国が再び不安定化し遂に体制崩壊へ。韓国に移民が押し寄せ経済的な負担を強いられる。

6. ブラジル中銀が利上げを再開、メキシコの改革路線にブレーキ
ブラジル中央銀行(BCB)は10月の大統領選終了後、利上げを再開へ。労働市場に打撃を与え賃金の伸びは鈍化する。政府は財政健全策を採り、格下げ回避を狙う。成長は構造改革により、持ち直していく。メインシナリオではないがレアルが売りを浴びインフレが急伸し、可処分所得と消費を直撃するリスクも。失業率の上昇につながるものの、インフレ制御をねらいBCBは積極的な利上げを決断する。結果、需要はさらに鈍化しブラジル債務拡大への不安が募る。

メキシコでは改革が成功という果実を実らせるときがくる一方で、北米自由貿易協定(NAFTA)とサパティスタ民族解放軍の反乱から20周年を迎える2014年に反対派が勢力を増し改革の法制化と実施が遅れる。

7. モスクワが旧ソ連体制を取りまとめへ、トルコ共和国中央銀行は伝統的政策へ回帰
欧州(EU)・米国自由貿易協定が世界経済の水準になる不安から、ロシアはユーラシア経済共同体・関税同盟の中枢としてモスクワをブリュッセル化させ貿易交渉役を担う。

南アフリカではFedの買い入れ縮小に伴い、ランド安が深刻化。膨大な経常赤字を抱えるため、南アフリカ準備銀行(SARB)は市場予想よりずっと早い段階で利上げを決断する。SARBの断固たる利上げによって家計と企業の投資を縮小する半面、経常赤字の削減をもたらす。

トルコではFOMCが資産買入を縮小に踏み切るなか、厳しい借り入れ基準と政府の債務借換の必要性も重なってトルコ国内金利が上昇し資金調達への不安が再燃する。トルコ共和国中央銀行(CBRT)は資金調達への懸念と為替変動を抑制するための手段を使い果たし、伝統的な政策手段を採用。結果的にトルコ・リラの上昇がエマージング通貨で際立つようになる。

タイムズ・スクエアに建つMS本社。私も何度かこちらで取材させて頂きました。
Morgan+Stanley
(出所 : Zimbio)

MSは、他にも以下のようなサプライズを想定しております。

バブル・トラブル
英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデンで住宅価格が上昇するも、各国中銀は利上げではなくマクロプルデンシャル政策に頼り切るのみ。結果的にバブルは崩壊し住宅価格が急落し、金融市場は不安定化し信頼感と成長を阻害する。

共和党が躍進しねじれ解消
2010年に発生したねじれ国会により、政策は停滞してきた。しかし2014年の中間選挙で共和党がありったけの資金と時間をつぎ込んだ成果が現れ上院でも過半数を獲得し、ねじれが解消へ。オバマ米大統領は取引材料に不足し、包括的な赤字削減を伴う予算案の合意を余儀なくされる。2013年10月に起こった政府機関の閉鎖などといった米議会発の危機発生リスクを解消させ、消費者と企業のセンチメントおよび金融市場に安定をもたらす。

日本では安倍政権の圧力もあって大企業から労働不足が深刻な中小企業まで賃金を引き上げていき、前年比2%へ賃上げ幅に広げていく。労働市場のひっ迫も労働法の改正を促し、採用・解雇が柔軟化。特殊技能職の賃金上昇に貢献する。賃上げでインフレが引き上げられ、日銀の政策運営に信頼が増しドル円は109円程度のドル高・円安へ。日本国債利回りも上昇するため、109円台を超えた円安は進まず。

個人的にはこちらで指摘させて頂きましたように、ワタクシもFedの政策運営がサプライズになりうると予想しております。イスラエル中央銀行の総裁を経て新FRB副議長に就任するフィッシャー氏はフォワード・ガイダンスに消極的とされており、政策運営の柔軟性と自由度を獲得しようと尽力する可能性があります。Fedの政策に不透明性をもたらし、市場に混乱を与えかねません。新たに投票メンバーとなるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁のタカ派が加わることも、かく乱要因となり得ます。

中間選挙前に、労働市場の質的な改善に焦点が当たることもFedの頭痛の種となるでしょう。これまでの雇用改善が低賃金の職種だったことが強調され、所得のさらなる格差もクローズアップされ、結果的にFedによる数値目標の意義が失われるのではないでしょうか。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、サプライズを提供しておりますね。

・石油輸出国機構(OPEC)がビットコイン建てで原油を取引

・アップルがソニーを買収

・ フランスがシリアに侵攻

・イタリアが債務再編

・南アフリカが新興市場の危機招く

2014年にどんなサプライズが起こりようとも、皆さまにご多幸がありますように。

(カバー写真 : vacanzestudioweb.com)

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