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FOMC、インフレのレンジ下限を設定か

by • December 12, 2013 • Latest NewsComments (0)1375

Fed’s Caution On Inflation Might Lead Them To Hold Off On Taper.

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は12日、FOMCを17−18日に控え「インフレへの認識が変わり、Fedはレンジ下限を設定か 」との記事を配信しました。ジョン・ヒルゼンラス記者ではなく、スペンサー・ジェイカブ記者によるものです。

失業率が11月に7.0%へ低下し、利上げ開始への数値目標「6.5%」に到達するのも時間の問題となってきました。とはいえ、インフレを振り返ってみると米10月PCEデフレーターは前年同月比0.7%の上昇と、2009年10月にプラス転換してから2番目に低い水準。コアPCEデフレーターも、1.1%と2011年3月以来の水準へ減速しています。こうした状況を踏まえ、WSJ紙は「ディスインフレ」の危機回避をねらい数値目標の2.5%の上限レンジに対し「下限レンジを設定する」シナリオを描いているんです。

WSJ紙によると、クリーブランド連銀のエコノミストはレンジ下限を「1.75%」に設定した場合の最初の利上げ時期につき「2016年1−3月」と試算していました。9月時点の経済・政策金利見通し(SEP)で17名のFOMC参加者のうち12名が「2015年」と回答していたことを踏まえると、一段と後ろ倒しされています。

レンジ下限の設定導入で低金利政策が予想以上に長期化するなら、量的緩和(QE)縮小にも急がないとも解釈できます。筆者のように12月開始の不支持派には、朗報です。

2007年まで金融政策部長としてグリーンスパン前FRB議長とバーナンキFRB議長に仕え、議事録をまとめていたヴィンセント・ラインハート氏率いるモルガン・スタンレーのエコノミスト・チームも、3月支持派です。

足元の経済指標を振り返ると、確かに強含みが多い。
・米11月雇用統計で非農業部門就労者数の3ヵ月平均が19.3万人、失業率が7.0%と5年ぶり低水準
・米11月ISM製造業景況指数が2年半ぶりの高水準
・米11月新車販売台数が2007年5月以来の高水準
・足元の小売売上高が好調、在庫も増加し10−12月期のGDPは2%付近へ

それでも、ラインハート氏は12月FOMCで強い経済指標を「QE開始の基盤作り」として活用すると予想。1月28−29日のFOMC以前に確認できる経済指標が限られるなか、新FRB議長に就任するイエレン氏が2月の旧ハンフリー・ホーキンス証言をはじめ、米上下両院経済委員会など米議会で発言する機会を捉え「テーパリングとタイトニングは別物」と説明責任を果たす——と見込んでいます。その間に、フォワード・ガイダンスに対し調整を施す時間もありますしね。

ラインハート氏率いるモルガン・スタンレーは、12月のFOMCを含むQE縮小開始の確率を以下のように提示しています。3月の確率が35%と最も高く、12月は15%です。

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市場が注目する雇用指標の強含みの背景に 1)政府機関閉鎖・再開の反動、2)米新規失業保険申請件数は11月にコロンバス・デー、ベテランズ・デー、サンクスギビング・デーで季節調整——というかく乱要因があったことも、忘れてはいけません。

緊急失業保険給付(EUC)が12月28日に期限切れを迎え、失業率がさらに低下する点にも要注意です。JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは長期失業者が労働市場から退出するため、必然的に労働人口に占める失業者が一段と減少する可能性をにらみ「数ヵ月以内」に数値目標「6.5%」に到達すると予想。FOMCにとって、「金利引き上げの目安とのメッセージを伝える」必要性が強まると指摘しています。フェローリ氏は、1月テーパリング開始派ですが。

QE縮小が既定路線とはいえ、12月はクリスマス休暇で流動性が乏しくなる頃でもあります。わざわざバーナンキFRB議長がバッドサンタに扮し、マーケットを混乱させるのかというと疑問が残ります。

(カバー写真 : quartz)

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